終末のフール/伊坂幸太郎

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

さて、伊坂幸太郎の終末のフールが文庫化されたので迷わずに買い、読んでいたわけで。

とりあえず、裏からあらすじ抜粋。

八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年と言う時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての降伏とは? 今日を生きることの意味を知る物語。

舞台を同じくした色々な人たちが、それぞれの葛藤を持って生活している。

時間軸がちょっとずつ後になるにつれて進んでいくのは特に気にならずに読めた。というのも、ちょっとずつ登場人物が読み込まれていくからだな。

終末っていう漠然とした終わりに対しての捉え方もそれぞれ違い、その終わりがあることでどう生きるか。解説にもあったが死を強烈に存在させることによって生を際立たせる、これで特に生き方が強く見えるんだなぁと。

個人的には冬眠、天体、演劇、深海が好みです。

以下、ネタバレ含むやも。

冬眠のガールより。
「『大丈夫ですか』と声をかけた後で、『これも何かの縁ですね』っていうのよ」

終末なのに、他人との出会いに浮かれてる感じが強さを感じられて好き。

天体のヨールより。
「わざわざ、その発見を矢部君に教えてあげたんだから、もっと感謝してくれてもいいと思うよ」
「わざわざ、その発見を聞きにきてやった俺にも、もっと感謝してくれ」

こんな会話ができるような関係がうらやましい。いいなぁ…

演劇のオールより。
簡単に感化されることはたぶん、十代の特権に違いない。

同意。

深海のポールより。
 屋上から立ち去ろうとしたところで、ふと思いつき、意地悪をするつもりでもなかったのだけれど、「母さんが亡くなった時、どう思った?」と訊ねた。「母さんがあの集会に行ったときは怖かったんだろ。死んだ時はどうだったわけ」
 父は怒りもしなければ、困惑もしなかった。落ちている材木に手をやりながら、「あのなあ」と言った。「おまえには言ってなかったけどな。俺の一番大事な人間は政子だったんだよ」
 私が特に返事もせずに、立っていると、父はさらにこちらに指を向け、「息子のおまえよりも、だよ」と口元をほころばせた。「怒ったか?」
 いいと思います。私はそう返事をする。

こんなことを言えるくらいに好きな人にめぐり合えればいいなぁ。

とまぁこんなものでしょうか?

ラッシュライフグラスホッパーアヒルと鴨のコインロッカー、オーデュボンの祈りみたいな作品構成も好きですが、死神の精度や砂漠、終末のフールのような構成の方が好きだなぁ…

そんな感じー。